理学療法士にとっての鑑別診断
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僕は老健で理学療法士として働いているわけですが、常日頃思うのは、①いかに廃用を予防するかと、②いかに残存機能を用いて生活動作を自立させるかということ。
PhysicalTherapyはその目的のために使います。
トイレ動作と廃用予防
①について長期間入所されている方を見ると、トイレ動作がキーになっています。
トイレに一人で行ける、もしくはわずかな介助で遂行できるということは、日に何回も立ち上がったりトイレまで移動するということですよね。
また、食事前、就寝前にはトイレに行くという生活習慣を守ることでもあり、精神的・身体的廃用を予防するキーになっているように思います。
あくまで経験上ですが。
このトイレ動作ができなくなっていく原因は…
原因として
(1)肺炎、腎不全、心不全、脳の血管性病変等、臓器の問題で治療のため臥床期間があり、廃用が進んだ場合。
(2)痛みで行動が制限された場合。
の2つが多いです。
(2)はさらに、
(a)転倒・転落等による外力により骨折や軟部組織の損傷が生じている場合
(b)客観的に原因が特定できない場合
の2種類があります。
(1)に関しては直接の治療は内科的・外科的に行われるので、理学療法士の手を離れていきますが、(2)に関しては理学療法士の役割が重要です。
特に(b)については、X-PやMRIで確かめられるような臓器の異常がないということなので、機能の異常から生じるものととらえるべきでしょう。
物理的に治療をしていくPhysicalTherapistの本領発揮です。
機能の異常が顕在化する前に治療してしまいましょう。
治療の方法は割愛。いろいろ調べてください。
PhysicalTherapyでいいのか?
でも、(b)の痛みに(a)や(1)が隠れていたらどうしますか?
PhysicalTherapyをいくらやってもよくならない。
やってもやっても悪化するばかり。
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自分の技術が足りない…
そうかもしれないけど、そもそもの適応のマチガイだとしたら。
下手すりゃ死につながります。
「医者が言ったから僕に責任ありません」
って言ってられないでしょ。
そんなのセラピストの理屈ですから。
それはわかってます。
わかってるけど、自分の技術不足とそもそもの適応外の区別がつきません。
そうなんです。
100発100中に近い治療技術があれば治療に反応しなければ適応外という判断がつきますが、現実はその域にいる理学療法士がどれほどいるのか。
「鑑別診断」ということ
だから、PhysicalTherapyの適応・非適応を判断する技術と知識を持たなければいけないんです。
これは「鑑別診断」と言います。
そもそもそれは医師が判断すること?
だーかーら! そんなこと言ってられないって言ったでしょ。
理学療法士になると、患者と話をする時間が長いし、Physicalな面でいろいろな徴候に気づくチャンスがあります。
それを正確にとらえられれば、助かる患者は多いはずです。
突然の腰痛 見逃していないか?
老健でよく出会うのは、突然の腰痛です。
高齢になると骨のカルシウム量が低下するから、ちょっとした衝撃やちょっとひねっただけで椎体の骨折を招いたりします。
「運動不足」で片づけられてしまうこともあるけど。
ただ、それが、夜間痛が主だとしたら?
座ってないと眠れないなんて訴えがあったとしたら?
重大な病気を見逃すことになります。
あなたのせいで発見が遅れて重篤化したら。
恐ろしいことですね。
家族は「お世話になりました」と頭を下げるでしょうけど、あなたは「気づいていたのに」という罪悪感を抱えたまま。
どうします?
上の例だと、学校では「がんの転移はしばしば病的骨折を引き起こす」くらいしか習いません。
勉強しなきゃいかんです。