作業療法と現象学 医学モデルと作業モデル 世界作業療法デーに思うこと
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今日は世界作業療法デーです。
僕が作業療法の勉強を始めたとき、大学時代に勉強していた「現象学」そのものだなと感じました。
「現象学」
ほとんどの人が、「なにそれ?」ですよね。
ちょっと知った人は、「難解でよくわからん」ですよね。
現象学を学んで思ったこと
現象学を理解するには、研ぎ澄まされた感性と高度な言語能力が必要な気がします。
それ抜きに、ただ本を読むだけでは理解できないでしょう。
僕みたいに学部で勉強した程度ではようやく入り口に立てるだけ。
でも、素直な感性の持ち主には、当たり前のことを当たり前に言っているだけに感じるはず。
究極の命題「事象そのものへ」
Zu den Sachen selbst!(事象そのものへ)
の一言に尽きます。
そこに起きている事実に深く身を沈めていくと、突然何も見えなくなる瞬間があります。
見えなくなる直前にかすかに見えた何かを捕まえるようなプロセス。
それが僕が受けた現象学の印象。
大学時代の恩師(勝手に恩師と呼ばせていただきます)は「現象学は心理学だ」と言っていました。
それは、現象学で論じていることは心の問題だ、ということではなく、現象学が臨床心理学そのものだという意味だと理解しています。
今となっては確かめようがありませんが、残された著書を読むとそうであろうということに確信が持てます。
「自分自身」という何か
「自分自身」なるものを知っていますか?
知っているはずです。あなたのことですから。
説明してくれと言われたら、自分の写真を持ち出しますか?
あなたが自分自身を実感するのは、その写真を見た時ですか?
いま、自分の外見が見えてますか?
でもどこかで外見を認識していることでしょう。
あなたが今認識している自分の外見は、その写真の外見ですか?
もう一度。
どんな時、自分自身を実感しますか?
楽しい時
うれしい時
誰かに理解してもらえた時
わかりあえた時
誰かと触れ合った時
美しい景色を見て感動した時
自分という「モノ」は精神という入れ物の中にある、あるいは肉体という入れ物の中にある
というのがよくあるエセ心理学のとらえ方です。
けど、自分自身という事象をとらえてみると、自分自身は外の世界に広がっていきます。
何かに触れ、何かを見たり聞いたりしたときにそこに生じるといった方が正確なのでしょう。
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僕に捕まえられる事象はその程度。
人を理解するための苦しみ
恩師はフィールドワークの一環で、IPRセミナーというものをやっていました。
ゼミの合宿ではその縮小版のようなことを毎年やりました。
それは、グループワークといえばわかりやすいけど、グループワークという言葉は正確ではありません。
課題は何もなく、前置きもなく、何名かでそこに座ります。
そうすると何かが起こります。
それぞれの行動、言葉は、普段の人間関係の縮図となります。
それぞれの世界がそこに展開されるといった感じ。
対立がおこったり、怒りや悲しみ、喜び、いろいろな感情が生まれます。
そこに起こるすべてが、それぞれの現実になります。
やがて、人を見て我に気づき、我を見て人に気づき、共感が生まれ、瞬間的に誰かを理解し、自分自身の問題にも気づいていく。
そんなことが起こります。
誰かを理解するまでの生みの苦しみみたいなことを実感します。
自称心理学者さんへ
人を理解するためのHowToなんてないと思うのですが、最近はやりの「自称」心理学はHowtoばかりですね。
僕は疑わしい目で見ています。
そもそも「こんな相手にはこうすればいい」なんて勉強をしている人に、あなたの本心を打ち明けたいですか?
流行りのアドラー心理学。
いろいろな人の解説を読むと、僕には、アドラーの人生論と処世術を述べただけで、心理学には見えません。
人を理解するにさえ至らない、自分が楽しく生きるためのHowto本。
でも、著名な心理学者が処世術を語るとは思えませんよね。誰かが捻じ曲げて伝えてるのではないかな?
あなたはどちらですか?
ゼミの合宿で院生がこんなこと言ってました。
「心理学を志す動機は2通り。自分を理解したいのか、他人を理解したいのか。前者はダメな心理学者、後者はいい心理学者になる。」と。
そんなこんなで、人を理解することの難しさを知り、現在に至ります。(かなり過程を省略)

恩師(早坂泰次郎教授)の訳した本です。現象学にしてはわかりやすい本です。
人間ひとりひとり―現象学的精神病理学入門 (現代社白鳳選書 (6))
Occupational Therapy in PM&R
Occupationを現象学的にとらえると、面白いと思いますよ。
Occupational Therapy in PM&RでのOccupationという事象は、医学モデルで理解されるPhysical Medicineの一部であり、同時にその人自身であったりします。(←作業モデルというのでしょうか?)
その両方を同時に見て、同時に治療に応用していくってのが優秀なOTなんでしょうね。